Fahrenheit -華氏-
お前は俺の彼氏か!って突っ込みたくなる。
こんな会話してっから、周りから誤解を受ける羽目になるんだろ!?
「今…今はえーっと…どこだっけ?ここ…」
「藤岡パーキングエリアです」
いつの間にか戻ってきた瑠華が口ぞえしてくれた。
「あぁそうそう。藤岡パーキングエリア」
『藤岡パーキングエリアぁ??あの上信越の?』裕二が素っ頓狂な声をあげる。
『なに?出張??珍しいな』
「……いんや旅行」
『旅行?何でよ。まさか…お前とうとう柏木さんに振られた!?んで、傷心旅行??』
「んなわけあるかぁ!……か、彼女とだよ……」
ちらりと瑠華を見ると、彼女はちょっと微笑み返してくれた。
思わずにへらと頬が緩む。
『彼女だぁ!?誰よ!お前柏木さんは諦めたのかよ』
「……えーっと…」
言いよどんでいると、タバコを吸いおえた瑠華が膝の上に頬杖をついて俺を上目遣いに見上げていた。
か、可愛い!
「麻野さんでしょ?いいんじゃないですか?ホントのこと言っても」
小さく囁いた声で、俺はびっくりして、それでもキュンと心臓が音を立てて縮まった。