Fahrenheit -華氏-


エプロンを掛けた店主が試飲用にグラスを用意してくれた。


淡いピンク色のロゼワイン。


瑠華は「ありがとうございます」なんて受け取ってる。気の良さそうな店主は俺を見て、


「旦那さんもどうぞ」なんて勧めてくれた。


えっ!!!ってか!旦那さん!!俺たち夫婦に見えるの!?


やっばい!!嬉しすぎて顔がにやけちまう。


にこにこしながらワイングラスを受け取るとき、


TRRRR……


俺の携帯に本日二度目の着信があった。


会社用の携帯はマンションに置きっぱなしにしてあるから、鳴ってるのはプライベート用。


何だよ!いいときにっ!!


怒りながらも、俺は携帯をジーンズから取り出した。


見慣れない番号に首を捻る。


「誰だぁ?」と言いつつも、通話ボタンを押した。


『……あ、もしもし、部長ですか?緑川ですぅ……』


遠慮がちなその声を聞いて、俺の顔から血の気が引いた。


み、緑川!!?


何で俺の携帯を知っている!?


さすがシロアリ!どこへでも入ってくるな。


『すみません。どうしても言っておきたいことがあったので、佐々木さんから聞きました』




佐々木~~~!!!シロアリを俺の住処へ送り込むな!!









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