Fahrenheit -華氏-
■Church(教会)
結局さっきの店でワインを二本(裕二たちへの土産と、俺たちで飲む分)、それからジャムを二種類買って、近くのカフェでお茶をした。
コーヒーを飲みながら他愛のないお喋りをして、夕暮れになると緑が生い茂る爽やかな道を二人手を繋いで歩いた。
舗装されていない、むき出しの土の地面。周りを囲むのはどこまでも伸びて居そうな木々。
所々に別荘が立ち並び、日本じゃないどこか異国を思わせた。
幼い頃も、こうやって2家族で散歩をした。
19年前は、あの女の子が俺の隣を歩いていたが、今俺の隣に居る子は瑠華だ。
不思議だな。
前はどこまでも続きそうなこの森のような道を、俺はあまり好きじゃなかった。
道の先は真っ暗で、お化けや熊が出てきそうな雰囲気があったから。
でも実際に出てくるのは小リスや小鳥で、今思うとすっげぇメルヘンチック。
「あ!リス」
瑠華が道の先を指差して言った。
瑠華が指差した先に小さなリスがこっちをじっと見ていた。
「おいで~」瑠華がしゃがみこむと、リスは警戒するようにさっと逃げてしまった。
「ああ、行っちゃった」
「野生のリスだよ。そう簡単には人間に懐かないよ」
「んー…」と瑠華は残念そう。
「啓は簡単に懐いたのにな…」
俺はリスと同じレベルかっ!!まぁ瑠華からしたら俺も犬扱いだけど……
ってそんなことどーでもいい!!
俺!のほほんと散歩してる場合じゃないっ!
瑠華に確かめきゃいけないことがあるってのに!!