Fahrenheit -華氏-
と言うことは、昨日彼女がソファで握っていた写真はこれだったのか。
てか、俺。自分に嫉妬してどーするよ!
そんな突っ込みを入れる反面、懐かしさがあふれ出しそうになる。
やっと……
やっと逢えた―――――
喜びか、懐かしさか―――どちらでもない感情が俺の中をひたすらに満たした。
恋なんて一生無縁だと思っていた。
セックスすれば体が満たされるし、「好き」とか「愛してる」なんて所詮は後付だった。
思い込んでいるか、それともリップサービスか。
そんな女たちと気の向くまま遊んで、あとは俺は親の勧めるまま適当に見合いして、適当に結婚して。
そんな風に終わっていくのだと思っていた。
一生その意味を知ることなく―――
だけど人を愛することの意味を、大切さを
俺は瑠華から教えてもらった。
燃えるような情熱も、凍りつくような寂しさも―――全部。
俺は泣きそうになった。
感情があふれ出す。
気持ちが―――
溢れ出す。
19年前、叶えられなかった願いが、今俺のすぐ傍にある。
願えばすぐ届く場所に―――
「啓」
彼女は俺の手にゆっくりと自分の手を重ねてきた。
「あたしも19年前、
あなたのことが好きだった――――
あなたと再会できて良かった」