Fahrenheit -華氏-
■Love(愛)
俺はいつの間にか顔を覆っていた手をそっと退けた。そして瑠華の顔をまっすぐに見つめた。
でも…あれ……?
なんだろうな。視界が滲んで、瑠華の姿がはっきりと見えない。
瑠華は俺の頬に手をやると、指をすっと動かした。
慈愛の満ちた微笑を湛え、何度も俺の頬を拭う。
そのとき初めて
俺は自分が泣いているのだということに気づいた。
「俺
好きだよ。
19年前も、今も―――変わらず」
「うん」
瑠華は小さく呟き、彼女もまた泣き出しそうに瞳を揺らした。
返事はか細く聞き取りにくかったけれど、顔には微笑みを浮かべている。
「愛してる。
いつか。
いつか俺と結婚してください」