Fahrenheit -華氏-


ぐしゃりと手の中で何かが捩れる音が聞こえ、俺ははっと我に返った。


涙を流したことが恥ずかしくて乱暴に目元を拭うと、手に握られたままだった封筒を見る。


「…ごめん…ぐしゃぐしゃにしちゃった…って、あれ?まだ何か入ってる?」


薄い紙の感触に混じって、ほんの少し硬い何かを感じた。


不思議に思って封筒の中を掌に開けると、コロンと一つ鍵が出てきた。


簡単には複製できない、複雑な形をしたシリンダーキーだった。


キーホルダー代わりにピンク色のリボンが結んである。


「もっと早く渡したかったんですが、何しろ特殊なキーなので、時間がかかってしまって」


ふぅと吐息をつきながら、瑠華が俺の手元を見る。


渡したかった……鍵―――?


「え!?これって!!いわゆる合鍵ってやつですか!!」


「合鍵ってやつです」


えぇ!!


「も、貰ってもいいの!?」


「いいですけど、部屋を汚さないでくださいね。あと、ピヨコを苛めないでください」


……俺がいつピヨコを苛めたよ?


まぁ昨夜はソファに寝転がっていたピヨコをその辺にポイッと投げ捨てたことは認めますけど…


って、そんなことどーでもいい!


「マジで!嬉しい!!」




俺はにこにこしてその鍵を眺めた。


あまりの嬉しさににこにこ…にやにや頬が緩む。


そしてイケナイ気持ちがムラムラ…






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