Fahrenheit -華氏-
それから二時間ぐらいが立った。
「……もう…限界…」
と何やら怪しい声を出して、祐二が壁に背をついた。
祐二の隣ではすっかり酔いつぶれている佐々木が机に突っ伏して眠っているし、マイペースに飲んでいた桐島も眠そうに目をしばたいている。
俺も正直、最後に頼んだ焼酎のロックが半分ほど残ってる。
く……くそっ
俺は忌々しげに目の前の柏木さんを見た。
柏木さんは出だしと全く表情を変えずに、今はグラスワインを飲んでいるところだ。
つ……強い!
酔い潰して、どうこうしようかと思ってたのに、こっちが先に潰されそうだった。
ビールから始まって、カクテル、焼酎、日本酒、ワイン。
柏木さんはどんどん酒を空けていった。
どういう体の造りになってんだよ!
そう叫びだしたかった。
ぐで~っと、場がだらけてるのを見て桐島が、
「そろそろお開きにしない?」と切り出した。
「そうだな。時間も時間だし」
俺は腕時計を見た。時間は12時ちょい前だ。
終電ぎりぎりってとこだな。
「……帰るか」
俺の言葉にそれぞれが、だらけ切った顔をして俺を見た。