Fahrenheit -華氏-
そんな可愛い冗談を、そんな可愛い顔で笑ってくれるのなら、
俺はいつだって騙されてあげるよ。
いつだって
だからもっと笑って?
もっともっと…俺に笑顔を見せてよ。
――――
――
短い休日が終わり週が明けると、柏木さんを堕とすというか、もうそんな余裕がないほど忙しい日々が続いた。
特に何をする、ということもなく日々は淡々と過ぎていく。
それにしても…
最近やたらと男の社員がこのブースに顔を出す確率が高いのは気のせい?
「柏木補佐、この報告書類ですが」
と経理の若いの。
柏木補佐と言うのは役職名で本当は“部長補佐”である。
「柏木補佐、この間の稟議通りました」
とこちらは綾子と同じ部署の男性秘書の一人。
「柏木補佐」
「柏木補佐……」
う~ん……柏木さんに話がある、と言うよりあまりにもあからさま。
てか、お前ら狙ってるんじゃねぇよ!!
柏木さんの元に野郎共が群がると、俺は一睨み。
睨むとビビッてそそくさと逃げていく。
ふ。
バカめ。柏木さんは俺が最初に目をつけたんだよ。
誰にも渡さねぇからなっ!!