Fahrenheit -華氏-
「それにしても…多いですね」
柏木さんが無表情にぽつりと漏らす。
「ああ、もう月末だからね。ごめんね?任せっきりで。でもホント助かるよ~。俺英語苦手だし、事務作業も苦手だから」
「いえ。大丈夫です。部長が契約取ってきてくれるので、私は事務作業に没頭できるんです。私、接客とか苦手だから」
そう言って書類の山から一冊ファイルを取り出した。
確かに、この三人という少人数にも関わらず、ここ最近の成績はうなぎ上りだ。
物流管理部に在籍していた頃のスランプがまるで嘘のよう。
それも柏木さんや佐々木のおかげだけど。
全く…いいチームに巡りあえたものだ。
と思ってるのは俺だけだったりして。
柏木さんには相変わらずしかられてばかりだし、佐々木の書類を確認しないとミスばかりだし。
「部長のお陰ですよ。あなたが契約を取ってきてくれて、私たちがその事後処理をする。
いいパートナーですよね。私たち」
柏木さんはパソコンから目を離さずにちらりと言った。