月影

「はい、これ」

「………」

小太郎は差し出された携帯を見つめながら、反応に困っていた。

「こたも、だいぶこっちに慣れてきたことだし、ステップアップよ」

にっこりと笑う玲子に、少し困惑しつつも、差し出された四角い携帯を手に取った。

「今はスマホが主流だけど、まずは電話とメールに慣れないとだからね」

小太郎には少し小さく感じられる真っ黒な折り畳み式の携帯。

「私のも同じ型のやつだから、分かりやすいでしょ」

玲子は携帯を取り出して見せる。
同じ形をした、でもあちこちに傷が出来て年季を感じさせる。