月影
家に帰ると、松子がすでに帰ってきていて、お帰り、と深幸を出迎えた。

「おばさん、今日は早かったんだね」

鞄をソファの上に放り投げると、椅子にかけていた自分のエプロンをつけて、松子の隣に立った。

「今日は遅くなると思ってたけど、原稿の回収が予定より早くできたからね。あ、ごはんよそってくれる?」

うん、と頷き、深幸はお茶碗を取りだし、ご飯をよそっていると、携帯がピリピリと音をたてた。

「………」

確認してみると、知らない番号だった。深幸は眉をひそめる。

「でないの?」

聞かれて深幸は唸った。

「知らない番号からだから」

携帯をそのまま机に置き、松子の手伝を続けた。
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