月影
「深幸、朝だぞ」

自分を起こす声に、私が「もうちょっと」と答えると、声の主は私の額にそっとキスをしてきた。

「…おはよ」

ガバッと起き上がると、そこには兄の姿があった。
ムスッとした私の表情に、さすがに気づいたようで、政宗は首を傾げながら不思議そうにどうした?と聞いてきた。

「何度言えばわかるわけ」

「何がだ」

「人の部屋に勝手に入んなっていっつもいってんじゃん!」

枕をバスッと投げつけると、政宗は笑って答えた。

「俺はお前の兄貴なんだから。関係ないだろ」

相変わらずのその答えに、私はため息をつくと、ベッドから降りてカーディガンを羽織り、部屋を出た。

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