月影
「松子おばさん、おはよう」

リビングに行くと、叔母の松子がちょうど朝食をテーブルに並べているところだった。

「相変わらず、政宗と深幸は仲いいわね」

くすくすと笑う松子に、私はムスッとした顔をした。

「親しき仲にも礼儀ありっていうじゃん。松子おばさんからもなんとか言ってよ」

はぁ、とため息をつきながら、手を合わせていただきます、と言うと、兄貴が隣に座って、同じようにいただきます、と手を合わせた。

「おばさん、今日も遅いの?」

トーストにバターを塗りながら聞くと、おばさんは苦笑いを浮かべて頷いた。

「多分、遅いと思うわ。締め切りが迫ってるからねー」

はぁ、とため息をつく松子。

「俺は今日は早く帰れるはずだ」

「…別に政宗の予定は聞いてない」

冷たく言うと、政宗は笑った。

「お前くらいだよ、俺にそんな態度をとる女は」

くしゃくしゃと頭を撫でてくる。

「ちょっと!髪がみだれるじゃん!」

怒ると、政宗は更に笑った。


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