月影
「なに、誰かいるの!?」

芽衣が目を輝かせながら聞いてくる。

「や、どこの誰かはわかんないんだけどさ。昨日ね、ちょっと気になる人にあった」

「はぁ?」

「予備校の帰りにさ…」

雨宿りを少ししたところで出会った男性の話をした。


あの人、暗かったけど、結構かっこよかった気がするし。
それに、なんかすごい優しそうな人な気がした。


「深幸…」

「え?なに?」

ふと芽衣を見ると、彼女は哀れみの顔をこっちに向けていた。

「その人の名前は?」

「知らないよ?だって聞いてないもん」

芽衣が特大のため息をつくと同時に、教室の扉が開いた。

「おら、席に着けー」

担任が教室の中に入ってきた。
芽衣は何か言いたそうだったが、あきらめて自分の席へと戻っていった。


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