月影
「…で?なんで政宗がここにいるわけ?」

授業が終わり、帰り支度をしていると、校門の方から悲鳴にも似た声が聞こえてきた。
何があったのかと窓から身を乗り出してみてみると、そこには門に寄りかかって立っている政宗の姿があった。

慌てて深幸が駆けつけると、政宗は悪びれた様子もなく、ニコニコと笑って手を振っていた。

「なんでって…今日、おばさんも遅いからな。外食しようぜ」

にっこりと微笑む政宗に、周囲の女生徒から黄色い悲鳴が上がる。

「…家で食べるからいい」

断ると、政宗はしごくがっかりした表情で、こっちを見てくる。


…うっ!


まるで捨てられた子犬みたいな眼差しを向けてくる。
そう、深幸が悪いかのように。
周囲の女生徒からの視線も痛い。

「もう、わかったわよ!付き合うわよ!」

ため息混じりに深幸が言うと、政宗は子供のように無邪気に喜んだ。

< 25 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop