月影
「あぁ、そうだ。悪い、ちょっとだけ寄り道していいか?」

いまや国民的アイドルといっても過言ではない。
そのくらい、政宗の顔は周囲に知れ渡っている。

それこそ、めがねや帽子なんかを身に着けたところで、焼け石に水の状態だ。

「いいけど。どこに?」

並んで歩くと、決まってそこかしこでパシャパシャとカメラを切る音がする。


…ほんっとに、うざい。


一緒に街中を歩く以上、仕方のないことだと、覚悟はしていたのだが、それでもやっぱり気になるもので。

「テレビ局。明日の仕事にいるものを渡し忘れたって、マネージャーから連絡があったからな」

「ふぅん」


さっさと適当なところでご飯食べて、今日は早く家に帰ろう。


家で政宗と二人きりと言うのもたいそううざいのだが、それでも、これだけ無神経に無断で人に隠し撮りされるよりはましだと、深幸は思った。

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