月影
小さなため息をついたときだった。

「ここだ、ここ」

ついたのは都内のテレビ局だった。

「にしても、今日は何の撮影だったの?」

首を傾げる深幸に、政宗はため息混じりに答えた。

「バラエティ番組の収録だったんだよ。おかげでスケジュールが押すこと押すこと」

その答えに、珍しいね、と深幸は返した。

「…代役だよ」

政宗の目つきが自然と悪くなる。


うわ、これ以上はこの話題、引っ張んないほうがいいっぽい。


もう政宗とは数年の付き合いになる。
怒るとのちのち、自分が面倒になることがわかっているので、そのまま、ふーん、とだけ答えて、その話題を打ち切った。

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