月影
「終わったのか」

不意に声をかけられ、玲子は驚いた。
振り返ると、そこには小太郎の姿があった。

「あ、うん。お待たせ。ごめんね、遅くなって」

と答えつつも、さっきまでいた彼女がいないことに気づき、首を傾げた。

「あれ?さっき、そこに…」

言いかけたところで、小太郎が答えた。

「断わった」

「え?どうして?」

不思議に思って聞いてみる。

「こちらの世界のことは、まだ、よくわからないことが多い」

そう答えると、帰ろう、と小太郎は微笑んだ。

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