月影
だが。

「何故…そんな風に思える」

思わず口をついて出た。

「戻ってきたのが、俺ではなく、幸姫であれば、とは思わないのか?」

言って気づく。


俺は一体、何を言っているんだ?


あり得なかった。
右も左も分からないこの世界で、自分を見返りも求めずに助けてくれた人だというのに。

だが、どうしても。
玲子が自分を恨んでいないとは思えなかったのだ。


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