月影
「…きっと」

玲子がふわりと笑う。


何故。


「あなたがこの世界に来たことには、意味があると、私は思っているわ」

彼女の表情は明るかった。
そして、小太郎には、なぜそんな顔ができるのかがわからなかった。

玲子は持っていたグラスを机に置くと、そっと、小太郎の手に重ねた。

「あの子は、あの時代に残ったけれど、幸せだった。これは私の想像なんかじゃなくて、あの子自身がそう、伝えてくれたから」

その言葉に、小太郎はえ?と聞き返した。
< 85 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop