月影
強く言われて、小太郎は思わずだまりこんだ。

「あなたは充分、主人を支えてきた。それは、北条氏も、あの子もそう思っているはず」

思わず玲子の口から出てきた言葉に、小太郎ははっとする。

「だけど、戦国の乱世では。あなたはきっと、忍としてしか生きることができない」

だから、と小太郎が口を開こうとした時だった。

「だから、あなたが一人の人として生きていけるように。あの子ではなく、あなたがこちらに飛ばされてきたのはきっと、そのためだと思ってる」

力強く言い切る玲子。
小太郎は複雑な気持ちだった。
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