月影
「だが俺は」

止めることはできなかった。

「彼も、彼女も。最後まで守り抜くことができなかったんだぞ!?忍でありながら、主を…」

言葉を続けられなかった。


そうだ、俺は。
氏康様のお側を離れて、守り切ることができなかった。
幸姫も、あの後どうなったのか、分からず仕舞いだ。

…何が忍だ。
何が主を守る、だ…


自分の不甲斐なさ、忍びとしての務めを果たせなかったこと、それがあまりにも悔しく、辛かった。
小太郎はぎりっと歯を食いしばった。
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