月影
少し市内から離れた場所にある大きな大学病院。私はそこの、救急の入り口までくると、携帯を取りだし、昨日の夜の着信番号に電話をかけた。

「もしもし?青柳です」

「おはようございます。早いですね」

まだ、診療が始まるには早い時間なのだが、先生はいつもと変わらないトーンで電話に出た。

「いつもより早く目が覚めたもので」

苦笑しながら言うと、後ろからトントン、と肩を叩かれた。

邪魔になっていたかと、頭を下げて避けると、そこにはにっこりと笑った私服姿の先生がいた。

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