猫の手も借りたい

そして、出発当日。朋子は自分が愛用しているハンカチを武志に渡しました。夏の空には雲ひとつありません。

「武志さん、お父様の言うことをしっかり聞くのですよ。あと、しっかり食べてくださいね。」

1年と言っても、我が子が心配にならないわけがありません。
「武志、向こうの話し聞かせてね。姉さんも、こっちの話しを手紙で書くから。」

武志は母、朋子の言葉。姉、正美の言葉にも元気よく返事をしました。そして父、勇と共に汽車に乗り、窓から外の景色を眺め、これからの生活に胸踊らせていました。

こうして、武志と勇は大阪に行きました。住む場所は、東京の家より小さいですがとても立派なお屋敷です。屋敷につくなり、勇が慌ただしく動き出しました。すぐに仕事に行くようです。

「武志、私はいつもみたいに家にいることができない。使用人と先生が1人づついるから、大丈夫だ。先生の言うことをしっかり聞きなさい。」

「はい!」

武志は、大阪での1年間学校に通わせて貰っていません。家で先生を雇って勉強していました。

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