猫の手も借りたい
「父さん、この写真って父さんが小さかった頃の?」
15年前に定年退職をして、自由気ままに毎日を過ごしていた。会社をすべて息子に託し、心配事もなかった。いつ死んでも悔いはない。
ある日は友人たちと囲碁を。ある日は妻と旅行に。ある日は孫と山を登り。そんなある日に家族総出で倉掃除をしている。理由は…なんとなくだ。
「どれ、見してみろ。」
息子の悟が、手に持っていた数枚の写真をこっちに渡す。そこには、坊主頭のひょろっとしたモヤシみたいな男の子と、同じく坊主頭の背が小さい元気そうな男の子。それから、おかっぱでスカートを履いた女の子の3人が写っていた。