猫の手も借りたい
「それは、裕一君が一代ちゃんのことを好きだったからじゃないの?嫉妬からだよ。」
真夏の太陽は、畦道を歩く二人の少年にも分け隔てなく熱を送っています。
「いや、許嫁やから好きってこともないんよ。僕にも許嫁はいるで。一つ下の近所の子なんやけど、好きでも何でもない。それどころか、ちゃんと話しさえしたことないんよ。裕一君と一代ちゃんも二人で話しとる所見たことないし、二人の口からそれぞれの名前ゆうてる所聞いたことないしなぁ。」
「ふうん、よく分からないな。女の子と仲良くしてるのが気にくわなかったのかな?一代ちゃんは何で急に勝にくっつき出したの?」
畦道が終わり、裏道に出てきました。どうやら勝の家はもうすぐのようです。
「それもよく分かんのよ。一代ちゃんなりの理由があるんやろうけどなぁ。今はみんな僕を避けるんやけど、一代ちゃんだけは一緒におってくれてな。いつも二人で遊んどるんよ。裕一君らは、それがますます気にくわんかったらしいけどな。」