猫の手も借りたい
「父さん、かなり昔のことだしさ。別に思い出さなくても良いんじゃない?過去は過去でさ。」
「でも気になるんだよ。この頃、一時大阪にいたんだ。その時の写真かもしれん。」
「何で大阪にいたの?」
「理由は忘れたな。なんでじゃったか?」
思い出そうとすればするほど記憶が色をなくしていく。私はどんな子だったのだろう?友達は他にいたのか?忘れてしまっている。でも、写真の二人の顔を見るたび、灰色のモヤモヤしたものが頭をちらつく。
写真は四枚あった。4枚あるうちの1枚目は、とある家の前だ。私は二人を見つめている。二人は楽しそうに笑っている。
2枚目は、公園みたいな場所だ。モヤシみたいな子は泣いていて、女の子が怒っているみたいだ。私は笑っている。
3枚目は、家の中だ。3人とも座り込んで泣いている。
4枚目は、街並み。私だけが泣いている。二人は後ろを向いていた。