恋愛鏡
-小林冬真
同じクラスの野球部員の彼に
今、私は恋をしている。
でもね、だめなんだ、本当は。
『普段さ、高谷って無口だよな~』
「えっ…そうかな?」
『そうだよ。教室で話しかけても、すっげぇ冷たいじゃん。』
そりゃそうだ。
だって、話さないようにしてるもん。
「ま、クールな女目指してるからね♪」
そんなの、本当は目指していない。
でも、教室ではあまり喋らない。
いや、喋れない。
『うっそだー!高谷には無理だろっ』
「うるさいなーっ」
冬真は、軽く睨む私に、嘘うそって言いながら笑った。
「冬真だって、教室で女子と喋ってたら、佐々木さん嫉妬しちゃうでしょ。」
『するわけねーじゃん。』
大袈裟にため息をつくところからして、冬真は知らないらしい。
―佐々木玲奈
17歳には見えないくらい、大人っぽくて、スタイルもいい。
地毛のこげ茶の髪にあてたパーマが、より一層引き立てているのが特徴的。
そして、すっごくやきもち焼き。
冬真に告白したり、仲良く喋っている子は、遠慮なく呼び出す。
前に、その現場に遭遇したことがあった。
『冬真は玲奈のなのっ。大して可愛くもないやつが、人の男に手ぇ出してんじゃねぇよっ』
この日から、冬真に教室で話しかけることは控えた。
面倒なのは、嫌だから。
この想いは…誰にも、知られちゃいけないから。