どうして言えなかったんだろう
「おぇってなってもしらないよ?」
「大丈夫大丈夫!」
恐る恐る口にくわえ肺に煙を入れていく。
スーっと冷たいメンソールが喉を通った。
「ガムみたい」
「ほれ吸えたろ?」
「スッキリする」
本当にそう感じたのだ。嫌なこと全てが吐き出されていく。そんなような感覚になったのだ。
チューハイを飲みながらタバコを吸う。酒の回りが早くなり、もともと酒に弱めの私はフラフラに近かった。
ポツポツ…
「雨ふってきた」
「屋根あるとこに移動すっか」
腕を貸してもらい屋根のある公民館へたどり着いた。
私はコンクリートの床に寝そべった。
「あー酔った」
「俺もヤバイ」
「ヤバイって先生のせいでしょ!」
応答がない。
「うそ!?寝た!?」
すると何かに強引な力で引き寄せられ唇に何かがあたった。
「え?先生?」
「俺、ずっと好きだった。夢茄のこと」
信じられない言葉だった。確かに幼馴染みでどの生徒よりも私は仲がいい。でも…でも。
「夢茄が塾に入ってきた時から可愛いって思ってて、最初はそれだけだったけどいつの間にか特別に考えちゃってて…」
「やめて!!」
「ごめん」
先生の手が服の中に入ってくる。
唇を口でふさがれ、恐怖で言葉が出ず、体だけが反応していた。
涙が止まらず体がガタガタと震え出した。
"凖…助けて…凖!"
何度も彼の名前を心の中で叫んだ。



< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop