サクラの季節に。





振り払うことなく、あたしは礼くんに抱き締められて、


溢れる涙をただ、流していた。



海千、すきだよ


だいすきなんだよ…。



―――想いを伝えられない。



それさえも、怯えて。



礼くんの腕から抜け出せずに、縋ってしまった、この醜く、哀れなあたし。



ごめん…、



あたしは、抱きしめてくれる腕が、欲しいわけじゃないんだ。





「れ…い、くん――」


「………」


「…礼くん、」


「………」


「っ礼くん…っ
ごめんなさい―――っ



離して!」





やっぱり、あたしは


どう考えても、海千がすきだよ。





< 23 / 30 >

この作品をシェア

pagetop