サクラの季節に。
振り払うことなく、あたしは礼くんに抱き締められて、
溢れる涙をただ、流していた。
海千、すきだよ
だいすきなんだよ…。
―――想いを伝えられない。
それさえも、怯えて。
礼くんの腕から抜け出せずに、縋ってしまった、この醜く、哀れなあたし。
ごめん…、
あたしは、抱きしめてくれる腕が、欲しいわけじゃないんだ。
「れ…い、くん――」
「………」
「…礼くん、」
「………」
「っ礼くん…っ
ごめんなさい―――っ
離して!」
やっぱり、あたしは
どう考えても、海千がすきだよ。