サクラの季節に。
「ちょっとぉ~、何?
海千は今、あたしと帰ってるんだけど?」
明らかに嫌な顔をあたしに向ける。
「山田さん…っ
ごめんなさい…
今すぐ、海千に伝えたいことがあるの…っ」
「はぁ~? 意味分かんなーい!
ねぇ、海千ぃ…行こう?」
妙に耳につく、そのなで声。
「……………ね」
「え?」
「ごめん、山田。
やっぱ俺、行かねーわ。」
「ちょっと?! 海千っ!!!?」
そのとき、海千にしっかりと掴まれた右手は、
そのままあたしと一緒に、海千が導く世界へ連れて行った。