顔のない天使
いつもと変わらない毎日を、
今日も過ごすと思っていた。
朝日で目覚め、小鳥と遊び、花々に水をあげ、木から湖を眺める。
木に登る途中、
「こんにちわ」
昨日と同じ声が後ろからした。
「昨日はありがとう」
ありがとう?
聞いたことのない言葉。
「無事に街に着いたよ」
"どうしてここにきたの"
「お礼を言いに来たんだ、」
"お礼、ってなに"
「ありがとう、って意味だよ。
感謝の意を込めて」
感謝、聞き慣れない言葉。
小鳥達や花々にはよく使うけれど
顔があるものには使ったことがない。
"そう、"
私は一言返すとその場を去ろうとした。
怖かったから。