顔のない天使
「湖が好きなの?
近くでみるともっと綺麗だよ」
栗色の瞳が私をとらえた。
"…ここが好きなだけ"
「ねぇ、どうして顔をださないの?」
…なんて、いった?
顔?
私に?
「その綺麗な黒髪もいいけれど
前が見にくいでしょ?」
黒髪?
「その長い髪の毛、風に揺れると綺麗だったけど
顔を出したらもっと綺麗だと思うな」
長い、髪の毛?
"私には顔がないの"
私はそう答えるので必死だった。
「なら、見に行こう。
君の顔を」
腕を捕まれた。
顔があるものも、私と変わらない腕をしていた。