顔のない天使
湖の近くへ
すたすたと歩く顔があるものも
足があって、手があって、
服を纏っている。
私にも足があって、手があって、服を纏っている。
違うのは顔があるか、ないか。
「ほら、湖だ…」
初めて、湖に来た。
キラキラ光る湖の中には見たことのない生きものが
沢山住んでいた。
「覗きこんでみて、」
茶色い髪の毛と栗色の瞳が
湖に映る。
私も湖に近づき、覗きこむ。
真っ黒で、やはり顔はない。
"やっぱり、顔がない"
湖が映したのは白い服と
真っ黒な姿。
栗色の瞳が近付く、
私は警戒した。
「こうやっても顔がないの?」
再び覗き込むと、
私に、
顔があった。