【短編】カワイイ娘の願い事
1.出窓の少女
窓辺に腰掛けていた少女は虚ろな目をして外を眺めていた。
視線の先に背の高いポプラ並木が街路樹として立ちはだかる。花が散ったポプラ並木から綿毛の種子が風にのり、きれいに刈り揃えられた芝生の上に次々と着地する。
庭は季節はずれの雪でも降ったかのように真っ白にされてしまった。
春の終わりを感じた少女は深いため息をつき、景色を見るのをやめ、髪をいじることに没頭した。人差し指に髪をクルクルッと巻き、手を放して戻すという行為を反復して時間を潰す。
コンコン……。
「入るよ」
父親の声が聞こえても少女は返事することなく、指に髪を絡める仕種をやめようとはしない。
「亜里沙、準備はできたかい?」
父親は柔和な顔で尋ねる。
「できてるわ」
それまで空虚感に苛まれていた少女の表情が引き締まっていた。気の強そうな瞳でまっすぐ前を見詰め、大人びた口調で対応する。
「さぁ、お母さんに最期のお別れをしにいこう」
父親が手を差し伸べると亜里沙はぴょんと出窓から飛び降りた。両肩がカボチャくらいふくらんだ黒いドレスを窮屈そうに揺らしながら父親と手を繋いで部屋を出ていく。
視線の先に背の高いポプラ並木が街路樹として立ちはだかる。花が散ったポプラ並木から綿毛の種子が風にのり、きれいに刈り揃えられた芝生の上に次々と着地する。
庭は季節はずれの雪でも降ったかのように真っ白にされてしまった。
春の終わりを感じた少女は深いため息をつき、景色を見るのをやめ、髪をいじることに没頭した。人差し指に髪をクルクルッと巻き、手を放して戻すという行為を反復して時間を潰す。
コンコン……。
「入るよ」
父親の声が聞こえても少女は返事することなく、指に髪を絡める仕種をやめようとはしない。
「亜里沙、準備はできたかい?」
父親は柔和な顔で尋ねる。
「できてるわ」
それまで空虚感に苛まれていた少女の表情が引き締まっていた。気の強そうな瞳でまっすぐ前を見詰め、大人びた口調で対応する。
「さぁ、お母さんに最期のお別れをしにいこう」
父親が手を差し伸べると亜里沙はぴょんと出窓から飛び降りた。両肩がカボチャくらいふくらんだ黒いドレスを窮屈そうに揺らしながら父親と手を繋いで部屋を出ていく。
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