懐中時計
懐中時計だった。
蓋のところに水色と桃色と澄んだ緑色の石が
1つ1つ決められた場所にはめてある。
私がそれを眺めていると
おじいさんは1つの涙を流して微笑んだ。
そして何も言わず、静かに
杖をつきながらまっすぐ進んでいった。
返そうと思えば返せた。
追いかけたら追いついたし、
今、声を出せば聞こえるはず。
だけど何かが私をそうさせようとしなかった。
ただ立って、おじいさんが見えなくなるまで見ていた。
そして、今日は月9がある!と思って
もらった時計をポケットに入れて
急いで家に入った。