ひねくれ双子の険しい恋路


『梨沙、あたしちょっと確かめてくるから、絶対に声出さないで。お願いね』


梨沙にコソコソっと耳打ちした。


「え?どういうこと?」


『大丈夫。梨沙は黙ってるだけでいいの。ただ、ちょっとだけ我慢して?』


「うん、いいけど…」



梨沙はちゃんと黙っててくれるかな…。




あたしはスクッとその場を立って、今入ってきた人の所へ向かう。



『朝日、お昼終わったの?』


「ああ。それで梨沙を探しに…」


『ちょうどよかった。あたしも今行こうとしてたところなの。砂希がいいっていうから』




少しだけ離れた場所に座っていた梨沙は、びっくりして目をまん丸くしている。


そう、あたしは梨沙のフリをして朝日に話しかけた。




「そっか、いいタイミング……って俺が間違うはずないだろ。砂希」


『あれ、バレた?』


イタズラっぽく笑ってみた。


さすが朝日。

間違うはずないか。



「なんで俺にこんなことしてんだよ」


ちょっと不機嫌な朝日。

そりゃそうか。

試されて怒らない人なんていないよね。


『試しただけ。だいぶ会ってなかったから、鈍ってないかなぁって』


「鈍るわけないだろ。

……俺は顔で見てるんじゃない」



朝日は、こういうやつ。

ちゃんと中身を見てくれる。



『ごめんって、そんな怒らないでよ。これあたしが勝手にやったことだから、梨沙には怒らないでね。それじゃ、邪魔者は退散しまーす』


「は?おい、砂希!」


朝日を無視して屋上を出た。




――梨沙、不安にさせてごめんね。





心の中で謝った。











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