ひねくれ双子の険しい恋路


――ガチャ。



屋上の扉があいた。


右腕をどかして誰かを確かめなくても、入ってきたのは誰かわかる。



こういう時に来るのって、


『一夜でしょ』


それしかない。

もう5限始まるし、ここでサボるのなんて一夜くらい。


「よくわかったな」

『当たり前』



ここに来たってことは、もう全部知ってるのかな。


いや、一夜なら絶対知ってる。

どこかで盗み聞いてたか、朝日に聞いたか。


『なんで来たの』


「朝日に聞いた。そしたら、砂希は屋上にいるからって言われた」


うん、予想通り。



『梨沙の様子は?』


朝日がついてれば特に問題はないと思うけど。



「泣きながら、笑ってた」



…そういえばさっき涙目だったね。



『そっか…』


でも、笑ってたんだ。


梨沙の幸せそうな笑顔が頭に浮かんだ。



一夜は、いつの間にかあたしの隣に座ってた。



『で、何しに来たの』



あたしは右腕で目を覆ったまま、一夜に問いかけた。





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