ひねくれ双子の険しい恋路
3.
――次の日の朝。
やっぱり教室はうるさかった。
それは女子の声オンリー。
「静夜く~ん」
「お菓子食べる?」
「勉強教えて~」
「誕生日いつ?」
昨日からずっとだ。
あたしと梨沙は、“うっさいね”と目で会話して席に着いた。
……なぜかいきなり女子の声が止まる。
「おはよ、双子ちゃん」
あたしと梨沙の前に、うるさくしていた原因の男が現れた。
だから女子の声も止まったのか…。
とか言ってもやっぱり止まるのは一瞬だけで、今度は不満と嫉妬の声が飛び交う。
「「何の用」」
「相変わらず冷たいなぁ」
ヘラヘラと笑う麻生静夜。
「2人のどっちか、俺と付き合わない~?」
「「はぁ?」」
「「「「えぇぇぇーっ!!!」」」」
あたしと梨沙の声は、クラスの人たちにかき消された。
目の前の男の言葉に、クラスの男子も女子もみんな驚いている。
「ふざけんなよ静夜。梨沙は俺のだ。手ぇ出すな」
梨沙のすぐそばで、朝日の声が聞こえた。
「朝日…」
梨沙は顔を真っ赤にして驚いてたけど、やっぱり嬉しさは隠せてない。
「なんだよ…。朝日と梨沙ちゃんはくっついてたのか。残念」
「諦めろ、静夜」
「はいはい」
朝日は、“静夜”って呼び捨てにする。
つい一昨日転入してきたばかりで、朝日は全然関わってなかったのに。
たぶん、面識があるんだと思う。
一夜と朝日は親友。
その一夜の双子の兄。
でも、静夜にたいする朝日の警戒がある。
「じゃー砂希ちゃんでいいや。俺と付き合ってよ」