ひねくれ双子の険しい恋路

3.




トイレを出て、水道で手首を冷やした。


左右の手首は真っ赤になっていて、爪のあともあった。


夏だから、水は少しぬるかった。



タオルで軽く水を拭いて、玄関に戻った。


そこには、あたしが脱ぎ捨てた靴が転がっていた。


それを拾って、下駄箱に入れてから内履きを履く。



もう1限が始まって、15分が経っていた。


あたしは、教室の前を通らない道を選んで屋上に向かう。



一夜にも、きっと麻生静夜とのことを言われるんだろうな……。


麻生を思い出して、背中がゾクリとした。


あの光景がフラッシュバックする。



あたしは、赤い手首をなでた。

少しでも痛みが引くように。

震えが、止まるように。



効果があったのか、屋上の扉の前に来た時には震えが止まった。




――ガチャッ


重い扉を開けた。


いつもの日陰のところに一夜がいた。


あたしはさっと手首を後ろに隠して、一夜の方へ歩いて行った。



『なんか用事?』


あたしが声をかけると、あたしのほうに振り向いた。


「あぁ」


一夜は、いつもの声よりちょっと低いような気がした。






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