ひねくれ双子の険しい恋路


『……別に何も』


あたしより背が高くて、あたしより大人っぽい翔に、なんかイラっとした。



「喧嘩したことなかったじゃん」


『1回だけした』


「あー、この前帰って来た時か」


『……知ってたの?』


「そんなことだと思ってた」


どうしてあたしの家族はみんな鋭いんだろう。

でも、知っても黙っててくれる優しさがある。



『梨沙には関係ない、って言っただけ』


「そりゃ梨沙はキツイな」


『…でも後悔はしてない』


これはあたしがふっかけられた問題だから、梨沙は関係ない。

あたしがなんとかしなきゃいけない。



「それから、心配した朝日くんの親友から逃げたってのも聞いたけど」



ドクンッと心臓が鳴った。


『へぇ、そんなことまで聞いたんだ』


それを隠すように冷静を装う。



「寂しいんじゃないの?」


……確信を突かれた。


「1人ぼっちになってさ」


別に1人は平気…。


『…そんなのあたしじゃない』


寂しい

怖い

泣きたい

泣きたくない

話したい

話せない

大丈夫

平気

ごめん

信じて



――いろんな感情が、あたしのなかに沸き起こる。

隠そうとしても隠せなくなる。



そんなの、あたしらしくない。





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