ひねくれ双子の険しい恋路


「昔は梨沙より砂希のが泣き虫だった」


『…そ、だっけ』


「そう。それで、梨沙が砂希を引っ張って家まで帰ってきた」


『む、昔の話だから』


なんだか急に恥ずかしくなって、涙も止まった。


「俺も小さかったけど、それはばっちり覚えてる」


『別に覚えてなくていいよ』



翔とあたしは、他愛もない話をしながら電車とバスを乗り継いだ。



――――――
―――


「「ただいまー」」



翔と家に入ったのはお昼くらいだった。

お昼でお母さんがいるかと思ったけど、「おかえりー」って声が聞こえなかった。


ちょっと残念。


リビングで、翔とお昼ご飯を食べた。

家にあったパンとかご飯でなんとか。



「で、どうすんの」


翔はお茶の入ったグラスをコトッと置いた。


『えっと…?』


「俺、中学生なんだよね。砂希とも学校違うし、会うこともない」


『え。それがどーしたの?』


なんかいきなり分けわかんないこと言うのとか一夜みたい…。


……でなんであたしは一夜なんか思い出してるわけ?


「だから、砂希に何があったか聞いてもどうにもならないんだよね」


……。

つまり、“話せ”と?

かなーり遠まわしにそう言ってるよね。


麻生静夜は、バラすなって言ったから梨沙には話せなかった。

話そうとしたけど…。


翔に話しても確かにどうにもならない。


「…だから」


うん。

翔って不器用だよね。

口はあんまり上手じゃないし、

言いたいこと遠まわしにするし、

素直じゃない…ような。




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