ひねくれ双子の険しい恋路
頭を働かせて、ほとんどの人が俺の方に集まった。
一夜は口数の多い方じゃなかったけど、俺のしたことでかなり静かになった。
アイツには、勉強もスポーツも先生も親戚もついてる。
いいじゃねーかよ、俺に1つくらい分けてくれたって。
俺には何もねぇんだよ。
同じ日に生まれて、同じように育ったのに、なんでみんな一夜の方に流れてくんだよ。
……それが悔しくて、一回母さんにあたったことあったな。
全部、俺たちを育てた母さんのせいにして責めた。
その時の俺は、もう正気じゃなかった。
そんで、母さん泣かせて父さんに殴られて家を飛び出した。
金と音楽プレイヤーと自転車で一週間家に戻らなかった。
一夜と父さんから、“どこにいるんだ”ってメールや電話がよく来たけど、とりあえず無視。
あー、でも、捜索願とか出されると迷惑だから一夜の携帯に“探すな”って返したな。
ま、それから、自転車だけでいろんなトコまで行った。
6日目、なんか海についてぼーっとしてたんだ。
そしたらさ、俺、もういいんじゃね?
って思えてきた。
比べられるなら、一夜の方がすごいなら、俺もういらないじゃん?
母さん泣かせるし、父さんに殴られるし、一夜の周りのヤツ奪ったし。
俺なんかただの親不孝じゃん?
それが6日目の夕方。
太陽が沈む、真っ赤な海を見てた時、携帯が鳴ったんだ。
一夜に“探すな”って返してから、鳴ってなかった携帯が。
メールらしくて、あけてみたんだ。
驚いたことに、母さんからだった。
たった一文、
“生きてる?”
って。