ひねくれ双子の険しい恋路


頭を働かせて、ほとんどの人が俺の方に集まった。


一夜は口数の多い方じゃなかったけど、俺のしたことでかなり静かになった。


アイツには、勉強もスポーツも先生も親戚もついてる。


いいじゃねーかよ、俺に1つくらい分けてくれたって。

俺には何もねぇんだよ。


同じ日に生まれて、同じように育ったのに、なんでみんな一夜の方に流れてくんだよ。


……それが悔しくて、一回母さんにあたったことあったな。

全部、俺たちを育てた母さんのせいにして責めた。


その時の俺は、もう正気じゃなかった。


そんで、母さん泣かせて父さんに殴られて家を飛び出した。


金と音楽プレイヤーと自転車で一週間家に戻らなかった。


一夜と父さんから、“どこにいるんだ”ってメールや電話がよく来たけど、とりあえず無視。

あー、でも、捜索願とか出されると迷惑だから一夜の携帯に“探すな”って返したな。


ま、それから、自転車だけでいろんなトコまで行った。


6日目、なんか海についてぼーっとしてたんだ。


そしたらさ、俺、もういいんじゃね?

って思えてきた。


比べられるなら、一夜の方がすごいなら、俺もういらないじゃん?


母さん泣かせるし、父さんに殴られるし、一夜の周りのヤツ奪ったし。


俺なんかただの親不孝じゃん?


それが6日目の夕方。


太陽が沈む、真っ赤な海を見てた時、携帯が鳴ったんだ。


一夜に“探すな”って返してから、鳴ってなかった携帯が。


メールらしくて、あけてみたんだ。


驚いたことに、母さんからだった。

たった一文、

“生きてる?”

って。





< 232 / 392 >

この作品をシェア

pagetop