ひねくれ双子の険しい恋路
3.
麻生の話が終わるのを待っていたかのように、雨がぽつぽつと降り出した。
「これで、全部」
何も言わないあたしに、麻生はさっきの言葉をもう一度繰り返した。
『……うん』
コイツに、あんな重たい昔があったなんて思いもしなかった。
そしてその思いは今も、
……続いてる。
「俺が砂希ちゃんに近づいた理由、教えようか」
『……何』
雨の量は変わらず、静かな教室にぽつぽつと音が聞こえる。
教室が静かすぎるせいか、その音はよく響いていた。
「一夜を、苦しめたかっただけなんだよ」
麻生はそう言って、目線は落したまま悲しそうに笑った。
「俺だけが辛いのなんて不公平だろ、双子なのに」
…でもそれは、
『一夜だって辛かったはず』
麻生は目線をあたしに向けた。
『友達奪われるのなんて、いいものじゃないでしょ』
自分から離れるのと、
急に離れていくのじゃ、
全然ちがうと思う……。
「一夜も苦しめばいいんだよ」
『…あたし思ったんだけど、アンタもひねくれてるよ』
ついため息が漏れた。