ひねくれ双子の険しい恋路


『じゃあもう大丈夫だね?』


「…心配してくれるんだ?」


『ただの確認。調子に乗るな』


あたしと麻生のやりとりを見てた一夜は、眉間にしわを寄せて険しい顔のままだった。


あとでちゃんと話そう。


「さーてと。俺は授業に戻ろうかなー」


麻生はいつもの調子で立ちあがった。


「俺さ、砂希ちゃんの気持ち無視して付き合え、なんて言ったけど」


自覚あったんだ。

ちょっと驚きだよ。


「本気で好きになっちゃった」


ふざけてる口調だけど、真っ直ぐな目であたしを見てた。


『はぁ…?』


「そーいうことで」


麻生はニッコリ笑って、出口の扉に手をかけた。

そして、もう一度振り返った。


「俺、麻生静夜なんだ」


『そんなこと知ってるよ』


「下の名前、呼んでよ」


下の名前…ね。


確かにあたしも“砂希”って呼ばれたら安心する。

あたしだけの名前。

あたしの存在する証拠。


アンタもそれに気付いたのかは知らないけど…。


『…気が向いたらね』


「ぷ、何それ」


そして、この空き教室から出て行った。




―――友達つくりなよ、静夜。






< 246 / 392 >

この作品をシェア

pagetop