ひねくれ双子の険しい恋路
『じゃあもう大丈夫だね?』
「…心配してくれるんだ?」
『ただの確認。調子に乗るな』
あたしと麻生のやりとりを見てた一夜は、眉間にしわを寄せて険しい顔のままだった。
あとでちゃんと話そう。
「さーてと。俺は授業に戻ろうかなー」
麻生はいつもの調子で立ちあがった。
「俺さ、砂希ちゃんの気持ち無視して付き合え、なんて言ったけど」
自覚あったんだ。
ちょっと驚きだよ。
「本気で好きになっちゃった」
ふざけてる口調だけど、真っ直ぐな目であたしを見てた。
『はぁ…?』
「そーいうことで」
麻生はニッコリ笑って、出口の扉に手をかけた。
そして、もう一度振り返った。
「俺、麻生静夜なんだ」
『そんなこと知ってるよ』
「下の名前、呼んでよ」
下の名前…ね。
確かにあたしも“砂希”って呼ばれたら安心する。
あたしだけの名前。
あたしの存在する証拠。
アンタもそれに気付いたのかは知らないけど…。
『…気が向いたらね』
「ぷ、何それ」
そして、この空き教室から出て行った。
―――友達つくりなよ、静夜。