ひねくれ双子の険しい恋路


「…ここ、来い」


一夜は自分の目の前を指差した。


『…なんで』


「いいから」


あたしは仕方なく、ゆっくりと一夜の指定した場所に座った。


『…来たけど』


床に座ったあたしは、椅子に座っている一夜を見上げた。


そしたら、一夜も椅子から降りて床に座った。


「ごめん」


『…え?』


一夜が謝った…?

なんで?


「静夜がああなったのは俺のせいだ。お前に迷惑かけたのも俺のせいだ」


一夜を、見た。

一夜は表情を変えずに、あたしを見る。


『違う。これはあたしとアイツの問題。そこに周りを巻き込ませたあたしが悪かっただけ』


巻き込まれた一夜が責任を感じることはない。


「お前ってさ…」


一夜はフッと小さく笑ってため息をついた。


『なに、バカにしてんの?』


「そうじゃねーよ。ただ、もう隠すな」


“隠すな”の一言で、一夜の顔がひきしまった。

だから、「何を?」と聞かなくてもわかった。



「絶対、隠すな。必ず俺に言え」



…いつもなら、「何様のつもり?」って言ったと思う。


『…ん』


だけど、今はちゃんと返事をした。

小さく、頷いて。




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