ひねくれ双子の険しい恋路


『この前…屋上で…ごめん』


あたしが悪かったことはきちんと謝らないといけない。

わかってるけど、大事なことを言う時ほど相手の目を見れない。


「…あぁ」


あたしがいきなり謝ったからなのか、一夜は少し驚いていた。


それもそうだよね。

あたしが謝ることなんて滅多にないから。

謝るようなことをする相手もいないし。


ただ…。

あたしが振り払った時の一夜の顔はずっと覚えてる。


驚いた表情、

一瞬だけ、悲しそうな顔。


いつものあたしなら、気にしない。

他の人間のことなんて、どうでもいい。



でも、どうして頭から離れなかったんだろう。

どうして、あんなに罪悪感があふれたんだろう。



――ビクッ


あたしは、手首に何かが触れて驚いた。


けど、それが一夜の手だと知ってひどく後悔した。


「俺も、怖いか?」


また、その顔にさせてしまうから。

一瞬だけ、悲しそうな顔になる。

すぐに表情を戻すけど…。


『違う、違う。だた、驚いただけ。ホントに違うから』


お願い、信じて…。


「わかってる。だからそんな顔すんな」


一夜は小さく笑って、あたしの頭を軽く2回たたいた。


「そんな顔」って、あたしどんな顔してた…?

って聞こうとしたけど、聞けなかった。


心臓がキュウっとして、ちょっと苦しかったから。


一夜にわかってもらえた。

笑って……くれた。


それが嬉しくて、そんな感覚になったんだと思う。


柄にもなく、嬉しがってるあたし。


どうしたの今日のあたし。





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