ひねくれ双子の険しい恋路
「変なこと言ってごめんね」
『ううん』
梨沙に笑顔が戻る。
あたしも、つられてニッコリした。
梨沙の笑顔は、かわいい。
朝日も、梨沙の笑顔が好きだって言ってたな。
「か、か、神谷さん」
体育館の入口近くに来たところで、後ろから声がした。
あたしと梨沙は一緒に振り返った。
どっちも“神谷”だし。
「え、えっと…」
――さっきの黒髪メガネさん。
戸惑ってる。
でも、この子が何かを言いたいのかはわかった。
『こっちだよ、さっきあなたを助けたのは』
あたしは梨沙を指した。
梨沙は黙ってあたしを見てから、黒髪メガネさんに向いた。
「何?」
「私、1-Aの学級委員長をしている宮木といいます。先程は、大変助かりました…」
黒髪メガネ…じゃなくて、宮木さんは顔を赤くして梨沙に2度目のお礼を言った。
「…いや、別に」
「その、ちゃんとお礼が言いたくて…」
「そんな立派なことしてないけど」
「いえ!!とても嬉しかったんです!!ヒーローのようでした!!」
梨沙より背の小さい宮木さんは、一生懸命話してる。
「ぷっ、何それ」
「本当ですよ!?ありがとうございました!!」
……梨沙が少し笑った。