ひねくれ双子の険しい恋路
「その必要はない」
あたし達、いや。
梨沙と麻弥の会話を聞こうとするように体育館は静まりかえっている。
そこに梨沙の声が響く。
それにはあたしも驚いて、思わず梨沙の方を見た。
梨沙はこっちを見なかった。
「朝日の彼女はあたし。
だけど朝日はものじゃないから、
考えたくないけど、いつか心変わりしちゃうかもしれない。
そこにあたしは口をはさめない」
梨沙は一回あたしを見て少し苦笑いした。
「それと同じだよ、麻弥。
麻弥が朝日の事をどう意識しようが麻弥の勝手。
諦めたいなら諦めればいいし、
嫌なら想い続ければいい。
麻弥の気持ちを決める権利はあたしにはない」
……言いきった梨沙が、
すごくかっこよく見えたのは
あたしだけじゃないはず。
梨沙の目は、麻弥に負けないくらい強くまっすぐで。
梨沙はあたしの姉だ、って。
失礼かもしれないけど、久しぶりにそう感じた。
年も性別も身長も血液型も全部一緒だけど
生まれる時間が数秒ちがっただけでこんなにも考え方が違うのだと
あたしは少し感動した。