ひねくれ双子の険しい恋路



「……あたしは何もないわけじゃないと思うよ?」



何が、なんて言わなくたってすぐにわかる。


基本的主語がない会話でもあたしたちは昔から通用したしね。


でも梨沙がそんな顔することない。



『うん、ありがと』


「ホントに、真面目にそう思ってる」


『どうしたの、梨沙』


あたしは梨沙の真剣な口ぶりに少し笑った。


でも梨沙は笑わなかった。

怒りもしなかった。


ただ、悲しそうな声で


「春に麻生くんと会ってもうすぐ1年経つんだよ?」


と言った。


『うん、そうだね』


冬が終わって春が来れば、あたしたちは2年生になる。



「ただのクラスメイトなんて、そんな小さな関係じゃない」



……やっぱり、梨沙だなぁ。

あたしの考えてたことと同じこと言う。



『もしあたしが小さな関係じゃなくてもっと違う何かがある、なんて思ってたとして。

でも一夜は、梨沙の言う“小さな関係”だと思ってればあたしバカみたいじゃん?』



もう一回、あたしは笑った。




梨沙がそんな顔することない、


そう意味を込めて。







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